fbpx

アガーラ 三宮…メディカルフィットネスのアガーラは、みなさまのアクティブライフをサポートします!

Home » ブログ » 名医と迷ランナー第9話

名医と迷ランナー第9話

更新日:2015年9月11日

運動生理学の視点から その2

 前回は、一般の方はあまり聞きなれない最大酸素摂取量について考えてみました。今回はさらに聞きなれないと思いますが、実際の練習内容を考える上で大切な最大酸素摂取水準について考えてみましょう。

 最大酸素摂取水準とは、最大酸素摂取量の何%で走り続けることができるかの最大値です。一般的にフルマラソンは、最大酸素摂取量の75〜85%程度で走り切ることが可能であると考えられています。前回紹介した最大酸素摂取量からフルマラソンのゴールタイムを推定する式は、簡単に計算するためにタイムの予想に幅のないものを用いましたが、実際はある程度の幅があると考えた方が現実的です。この差が初級者と上級者の差でもあります。成長期(概ね25歳前後)を終えた市民ランナーは、基本的に最大酸素摂取量が増えることはありえません。しかし、ある程度練習を積んで出た最初のタイムから、頑張って練習を重ねれば10%弱タイムを短縮できる可能性を秘めていることになります。最初のタイムが4時間00分であれば24分程度短縮でき、3時間36分で走れることになります。これにフォームの改善や減量による体重1kg当たりの最大酸素摂取量増加を合わせると最大30~40分程度のタイム短縮が可能となります。一流ランナーを含めてフルマラソンのベストタイムを出す一つの目安として、真剣に走り出してから10年前後とされているのは、最大酸素摂取水準を最大限引き上げるのに10年前後の期間が要することを示しているともいえます。

 少し視点を変えても同様のことがいえます。ヒトには、生理的な限界と心理的な限界があります。生理的な限界は、機能として最大限頑張れるはずの限界と考えて下さい。しかし、そこまで能力を発揮してしまうと、機能そのものが壊れたり、時には生命そのものへのリスクが高くなることから、リミッターのようなものがかかります。リミッターは安全を優先し、かなり低いレベルでそれ以上能力を発揮しないようにかかります。それを心理的限界と考えます。あまり好ましい表現ではありませんが「死ぬ気で走っても死ねない」理由がそこにあります。フルマラソンに限らず競技者は、この心理的限界を毎日毎日少しづつ科し、トレーニングを積み重ね、リミッターを引き上げ、生理的限界に少しでも近づけるために日々の練習を行っているといっても言い過ぎではありません。


前回と今回の内容からフルマラソンで好記録を出すには、最大酸素摂取量は維持。最大酸素摂取水準は可能な限り高め、維持していくことが重要であることは、ある程度理解して頂けたと思います。

そのために 実際のポイント練習としては、25才前後までは最大酸素摂取量を高めることを目的とした練習内容(インターバルやレペティショントレーニング等を中心)、25~35才前後は最大酸素摂取量を維持しながら、最大酸素摂取水準を高めることを目的とした練習内容(ペース走やリカバリー重視のインターバルトレーニング等を中心)、35才以上はその両方の低下を防ぐことを目的とした練習(ペース走やビルドアップ走等を中心)と他の要素によってカバーしていくことが練習の基本となります。

今回ポイント練習等々、初めて練習方法に関係する専門用語が出てきました。次回は、練習方法の専門用語の解説とともに、実際のフルマラソンの練習について考えてみます。



前へ 次へ